Book of the year

今年も残すところ1日となりました。どの様な1年だったでしょうか?悲しい別れもあれば可愛い新しい命との出会いもあるのが動物病院、数々のドラマがありました。で、1年を振り返るということで今回のお題は「Book of the year」。私の今年の1冊をご紹介。(ごめんなさい。日々の診療のことではなくて。)
増田俊也の「七帝柔道記」。今年読んだ中で最も熱く、最も痛く、最も涙した1冊です。七帝柔道とは北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の旧帝大の柔道部で行われている寝技中心の高専柔道の流れを汲む柔道でオリンピックなどで行われている講道館柔道とは全くルールが異なる特殊な柔道である。主人公はその七帝柔道に憧れ北海道大学に二浪し入学、柔道部で年に一度戦われる七帝戦の勝利のため来る日も来る日も己の尊厳をかけ肉体の限界に挑み地獄のような練習に明け暮れる若者たちの物語。作者の増田俊也は私と同い年の1965年生まれ、実際に北大で4年間七帝柔道を経験、この物語は作者の青春記ともいえるリアルさに満ちています。全く同じ時期に学生時代を過ごしたので舞台背景に共感することも多くありましたが同じ時にこんな青春を過ごしていた奴らがいるのか!と身体が震え熱くなりました。とにかくその練習が尋常ではない、寝技乱取り6分×8本と8分×2本、自由乱取り6分×8本(自由なのだが先輩に寝技に引き込まれるので実際には寝技乱取りと変わらない。)、「かみつき」乱取り5本~10本、「カメ取り」乱取り、5本~10本、「速攻」乱取り5本~10本、その後数百回の腕立て伏せが延々と続くのだ。しかも練習で絞め落とされるのは当たり前の過酷な稽古、その描写は読んでて痛くて苦しくて悔しくなります。毎日北の大地でボロ雑巾のようにクタクタになりながらも全ては七帝戦のために青春を捧げる熱い若者たち。いざ運命の七帝戦!その結果はいかに!
600ページに迫る長編ですが圧倒的な筆致であっという間に読めます。特に私たちの世代の男性必読です。帯には「これを読んで熱くならない男はいない!」とありましたから。
では今年一年ありがとうございます。よいお年をお迎えください。

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