今日4月11日に造幣局で「桜の通り抜け」が始まりました。大阪人なら誰もが知る行事、大阪以外の方、大阪人やけどちょっと復習という方のために簡単ですがおさらいを。
毎年4月中旬の桜の開花時に大阪市北区の造幣局では構内の560メートルの遊歩道を花見客のために1週間開放しています。
遊歩道は造幣局の南門から北門へ抜けるため「通り抜け」といわれます。始まりは明治16年で当時の造幣局長が「局員だけの花見ではもったいない、市民とともに楽しもう」と提案し始まりました。現在構内には八重桜など131種、350本の桜が見頃を迎えています。
というわけで桜にちなんで西加奈子「さくら」をご紹介。
大阪の下町に住む長谷川家、父さん、母さん、兄ちゃん、僕、妹のミキの5人家族。ニュータウンへの引っ越し、新しい生活と共にある女の子が長谷川家にやって来る。大人しくてやせっぽちの女の子。尻尾にピンクの花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた子犬。
僕の視点で幼い頃から成人した今の家族のことが描かれているのだが長谷川家の大事件が起きるまでは宇宙一幸せな家族の風景がユーモラスに描かれています。家族一人一人の個性が微笑ましく描かれています。もちろんサクラについても。
大事件とはみんなのヒーローだった兄ちゃんが交通事故に遭いその後自殺してしまいます。その後父さんは家出、母さんは酒に溺れ、ミキは内に籠ってしまう。でも物語に暗さは感じません。ある年の暮れ、父さんから僕に「年末、家に帰ります」との手紙が届きます。実家に集まった4人、家族の灯火が消えてしまいそうな中12歳と老犬となったサクラに異変が。父さんの運転で大晦日の夜を動物病院を探して疾走する4人と1匹を乗せた軽自動車。
この夜の出来事で灯りを取り戻す長谷川家。サクラが家族を繋いでたことにほろりときます。
大事件があっても湿っぽくさせない、けれどもじんわりと胸をしめつけられる、で最後は温かい素敵な物語です。