今更ながらですが私が診療の対象としている動物は我々人間と互いに言葉でのコミュニケーションをとることができません。
こちらの言っていることを理解してるであろう動物は数多くいますがそれを言葉にして返すことができません。
もちろん自分で病院に来ることなどありません。すべての動物は飼い主さん或いはそれに準じた方に連れて来られます。
そこでこちらの第一声「どうされました?」は飼い主さんに向けられていますが動物のことを尋ねています。
そして「下痢してるんです。」はもちろん飼い主さん自身のことではありません。
このようなやりとりに始まりそこから色んな話をして情報を集めいよいよ動物を診るという流れになります。(同時進行のこともありますが。)
非常にまれですが飼い主さんに「調子悪いから連れて行ったって」と頼まれて来られる「他人」の方もいます。
その場合話をして情報を得ることはできません。きっと依頼された飼い主さんは我々は「見た」だけで動物に何が起きているのかが解ると思っているのでしょう。たしかに問診なしで動物を時間をかけあらゆる検査を駆使し「診る」ことで診断ができることもあるかもしれません。
しかしそれには時間と費用がかかり現実的ではないでしょう。そこで重要になるのが飼い主さんとのお話、問診になるのです。
何度も来られてお互いに何となく性格がわかっている方ならこちらは(これを聞けば欲しい情報が得られるな)とか飼い主さんは(これ言うたら解ってもらいやすいかな)というのもあるでしょう。ところが初診の方はそうもいきません。互いに緊張し空気が張り詰め(なんてことは20年選手の私はほぼなくなりましたが)あまり口を開かない方もいるでしょう。でもこちらはできる限り必要な情報収集をしたいので色々質問をします。私の話す力、説明する力も大事ですがいかに話してもらうか、私の聞く力も大事なのです。
阿川佐和子「聞く力」を読みました。年をまたいでのベストセラー。売れに売れています。
氏の仕事であるインタビューを中心としたコミュニケーション術が書かれています。「問診」とは少し感覚的に異なるところはありますが話しやすい聞き方など参考になることが面白く書かれています。そしてやはり共通するのは「心をひらく」ということです。
飼い主さんに心をひらいてもらうことで動物も心をひらいてくれると思っているので。
まぁ、大阪のオバちゃんは聞いてもないことをベラベラ喋ってくれるので逆に情報過多になることもしばしばですが(笑)