膝蓋骨脱臼

犬の膝蓋骨脱臼はいわゆるお皿の骨が正常な位置から逸脱した状態をいいます。
内側にはずれる内方脱臼はヨークシャーテリア、ポメラニアン、トイプードル、チワワなどの小型犬に多く見られます。これは従来より遺伝的要因の高い疾患として認識されています。その病態は極めて複雑で先天性または成長過程における大腿四頭筋群(太ももの前側)の不正な配列によって成長とともに大腿骨、脛骨の変形、脛骨の内転、大腿脛関節の変形、大腿四頭筋の萎縮など骨格の変形から筋肉の変性まで様々な変化が起こります。
症状も脱臼の程度により無症状のものから正常な歩行が困難なものまで幅が広いです。
脱臼の程度の評価にグレード分類があります。(賛否ありますが)
普段は正常な位置にあり強制的に脱臼可能でほぼ無症状、時々脱臼するが勝手に戻りたまにビッコになる、普段から脱臼しているが指で押して整復可能で骨格の異常あり、指で押しても戻らず骨格変形が重度で歩き方もおかしい、といった分類をすることもあります。
難しいのが手術の適応およびその時期だと私は考えます。
脱臼があればグレードに関係なく全例に対し手術をする術者もいます。
私の考えは成犬の場合、痛みがあり機能障害があれば手術適応とします。しかし重度の骨格変形や膝を伸ばすことが出来ないなどの問題を持つ場合成功率は著しく低くなると思います。軽度の脱臼で痛みと機能障害が無いならば経過観察でよいでしょう。
若齢犬、たとえば3~4ヶ月齢で重度脱臼と骨格異常があれば早期手術を勧めます。
ただ軽症であっても手術をせず高齢になると膝関節内の靭帯断裂などもおきやすくなるので床など滑りにくくするなどの管理も重要になってきます。
また遺伝性疾患と考えられているので繁殖に供さないよう注意がいります。

写真の子は高齢のチワワで恒久脱臼で骨格の変形は重度ですが日常生活は問題なく元気に過ごしています。

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